
●五月病ってどんな病気?
入学や就職にともない学校や職場で新たな生活がスタートします。新生活は、慣れないことも多く知らず知らずのうちにストレスがたまるものです。気づかないうちに無理をしてしまうことも少なくありません。また、仕事の内容や環境が自分に合っていないために、「適応障害」を起こしていることもあります。こうして1カ月が過ぎ5月になる頃に、身体のだるさ、疲れやすさ、意欲がわかない、物事を悲観的に考えてしまう、よく眠れない、食欲がないなどの心身の症状が現れることがあります。これを「五月病」といいます。五月病は、正式な医学用語ではありませんが、一般に、この季節に学生や新入社員に起こりやすいため、こう呼ばれています。
●こんな症状が出たら要注意!五月病の様々な症状
無気力になったり不安感が強くなることが多いようです。「今まで楽にできていたことができなくなった」「大好きだった趣味に興味が持てなくなった」「常に漠然とした不安があり落ち着かない」などの症状は要注意です。また、胃痛や食欲不振、頭痛、めまい、不眠などが起こることもあります。
●五月病を防ぐにはどうすればいいの?
「ストレスは必ずあるもの」と認識して、ストレスと上手につきあう方法を考えましょう。十分な睡眠、休息を取るように心がけ、自分に合ったストレス解消法を見つけることが重要です。特に几帳面でまじめ、嫌と言えずに物事を引き受けてしまうといったタイプの人に五月病やうつ病が多いと言われていますので、注意が必要です。深刻に物事をとらえ過ぎず、新しい仕事や環境では失敗はつきものと考え、「できる範囲でいいや」と気を楽に持つことも大切です。ひとりで悩みを抱え込まずに、日頃から上司、同僚、家族などの身近な人に相談するようにしましょう。
漢方薬
・香蘇散(こうそさん)
気分が優れないとき、やや気分が暗くなっているときなどに有効です。風邪の極初期や胃腸が虚弱な方にも使われる漢方薬なので、気分の落ち込みと胃腸の不調、風邪っぽさが連動しているような人にも適応します。気持ちが落ちると免疫力が低下することも最近は立証されていますので、風邪をひきやすいというのも、五月病のひとつとして考えてもいいでしょう。香蘇散は気持ちが明るくなるような効果が期待できます。
・補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
補中益気湯は、「気虚(ききょ)」といって、身体を動かす動力である「気」というエネルギーが不足しているときに多く使われます。気というエネルギーは、身体と心のエネルギーですから、それが減るとさまざまなところのエネルギーが不足し、その結果、心や身体が動かなくなります。「あーしんどい。」「疲れたなぁ〜」というようなエネルギー不足を感じたときが目安になります。また、補中益気湯は、免疫系のバランスを整えることでも知られていますので、疲れが溜まって風邪をひきやすくなっているときなどにも効果的です。
・半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
ストレスが溜まってくると、喉の詰まりを感じる方も少なくないと思います。喉の詰まりを感じて咳払いをしても通りが良くならず、またそこに何か物が詰まっていたり、腫瘍ができているわけでもない、でも喉が詰まる…。こういったストレスによる喉の詰まりのことを、東洋医学・中医学用語では「梅核気(ばいかくき)」といいます。これは、「梅の種が詰まっているような感じがする」というのが語源ですが、言い得て妙な表現ですよね。
このような梅核気によく使われるのが半夏厚朴湯です。ストレスによる不安や気分の変調によって生じる喉の違和感は、それがために鬱陶しくてストレスが増して悪循環につながっていきます。半夏厚朴湯はそのような不快感を取り除き、気分を明るくしてくれます。
・加味逍遥散(かみしょうようさん)
加味逍遙散は、日本では更年期の女性によく使われる漢方処方のひとつですが、更年期だけではなく、五月病のような精神的な不安定さがあるときにも使われます。適応の特徴としては、考え込んでしまう傾向が強くなってきて、不眠、肩こり、動悸、めまいなどなど、不快な症状(不定愁訴)がたくさんあって挙げきれないような、あれもこれも症状として捉えてしまうようなとき、または、不満が溜まって周りに迷惑をかけてしまうくらいに当たってしまうようなとき。脇腹がはる、便通がうまく出ないといった状況も適応の目安になります。
・酸棗仁湯(さんそうにんとう)
酸棗仁湯は入眠障害や中途覚醒に使われる漢方薬ですが、睡眠のリズムそのものを整えてくれる効果が期待できます。五月連休で連日夜更かしをしてしまって、昼間眠くなってしまう人などにも有効になります。また、心身を酷使していると、身体も心も著しく疲弊しているにもかかわらず、精神が昂って眠れないということがありますが、こういった状況にも有効になります。酸棗仁湯には、クセになるような常習性がないこともありがたい存在です。また、睡眠のリズムを調整するものなので、昼間飲んでも眠くなるようなこともないのが酸棗仁湯の良いところでもあります。1日3回飲んでいるうちに、自然と眠りのサイクルがやってくるということがあります。
・桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
桂枝加竜骨牡蠣湯は、痩せ型で体力が弱く、その一方で興奮したり動悸が強い方に使われる漢方薬で、精神を安定させ、眠りを安定させる作用が知られています。変な夢が多くて起きた後に夢見が悪い方にも。また、自信を失っているときなども処方のポイントになりますので、この時季に環境が変わって仕事がうまくいかない、勉強についていけないといったことが背景にあるときはより効果的になります。
睡眠に関しては、その他に、記述している帰脾湯、四逆散なども候補になります。
